事例概要
| クライアント |
国立研究開発法人国立環境研究所 |
|---|---|
| お問い合わせ内容 | これまで研究が重ねられていた災害学と環境学の分野を掛け合わせて「災害環境学」という知的体系をつくるためのコンセプトを整理したい |
| プロジェクト概要 | 環境の保全に関わる調査研究を行っている国立環境研究所では、災害と自然環境のそれぞれの研究領域の知見を組み合わせた「災害環境研究」を推進しており、その知見を体系化して「災害環境学」として確立することを目指していた。しかし、災害環境研究に関わる研究者それぞれの専門分野が異なり、災害環境学がどういう学問なのかという共通認識が揃っていないという研究推進における本質的な課題を抱えていた。そこで、「そもそも災害環境学はどういうものなのか?」という根源的な問いに対して、これまで災害環境研究に関わったメンバーと共に考え、共通認識をコンセプトやフォーマットとして構造化・可視化し、図としてまとめた。 |
| 実施期間 |
2025年7月〜2025年11月 |
本プロジェクトについて
異なる専門性を持つ研究者の方々と共に、災害学と環境学の知見を統合する「災害環境学」の概念を深く掘り下げ、その存在意義と研究領域に関する共通認識を、議論と可視化のプロセスを通じて確立・体系化しました。
国立環境研究所では、東日本大震災以降続けてきた災害と環境に関する研究の知見を体系化し、「災害環境学」として確立することを目指していました。
しかし、災害と環境のそれぞれの分野ごとに専門性が異なるため、「災害環境学」という知的体系の根幹となる共通認識が研究チーム内で揃っていないという、研究推進における本質的な課題を抱えていました。
そこで、そのコンセプトを対外的に説明し、かつチーム内の目線合わせを可能にするための整理・可視化をご依頼いただきました。
このプロジェクトは大きく2つのフェーズに分かれます。
①災害環境学のコンセプトの構造化・可視化
②災害環境学が対象とする研究分野の構造化・可視化
まず”①災害環境学のコンセプトの構造化・可視化”についてです。
そもそも災害環境学が何のためにどういう学問としてあるのかについての共通認識を作るために、ワークショップ形式で各々の考えを言語化していただきながら可視化しました。

言語化にあたっては、コンセプトを説明するための体系的な整理のもと、問いを立てながら、各メンバーの考えを可視化し共有しました。


一人一人の意見を改めて言語化し、図解で可視化・共有することによって、それぞれの方々の意見の類似と差異が明らかになり、「災害環境学は本質的に何を解明する学問なのか?」「なぜ災害環境学が重要なのか?」といった議論が活発に行われました。
こうして議論が深まった上で、改めて全体の問いを振り返り、災害環境学として特に重要な観点は何かを全員で話し合い、議論を収束させていきました。


これらの議論と全体の流れを整理し、災害環境学のコンセプト図を作成しました。

こうしてコンセプトがまとまったことで、災害環境学の存在意義や解明したいことが一枚で表現できるようになりました。
しかし、このコンセプトだけでは抽象的であり、蓄積されてきた既存の研究との接続を示す必要がありました。そこで、研究テーマの具体的なつながりを整理するために、次のステップとして”②災害環境学が対象とする研究分野の構造化・可視化”を行いました。
ここでは、災害環境学がどういった分野を研究するべきものなのか、既存の研究と照らし合わせながら研究のタイプを整理していきました。


そして、災害環境学として研究タイプごとの研究テーマ数を当てはめて可視化し、災害環境学として捉えたときにどの分野が研究が多く、またどの分野が研究が今後求められるのかについて認識を揃えて議論ができるようなフォーマットを作成しました。

これにより、災害環境学について、コンセプトから具体的な研究まで一気通貫に考えるためのフォーマットを整備することができました。
本プロジェクトでは、異なる専門性を掛け合わせて新しいコンセプトを形にするために、誰かの強い意見だけではなく、関係者全体の意見を可視化しつつ整理しまとめていくことを大事にしました。
一人一人が問いに対して自分の意見を出し、それを全員が聞いて考え方の違いや重なりを共有しつつ議論を深めていくことができました。
整備されたコンセプトやフォーマットは、災害環境学の研究を次の段階へと進めるための基盤として活用が期待されています。異なる専門性の知見を統合し、社会がより持続可能になるための一歩に寄与できたことに大きな意義を感じています。