事例概要
| クライアント |
ハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)/日本スポーツ振興センター(JSC) |
|---|---|
| お問い合わせ内容 | リカバリーの科学的根拠の説明と、リカバリー手段・施設情報を紐づけたアスリート向けガイド資料の図解制作 |
| プロジェクト概要 | HPSCの複数施設にわたるリカバリー手段と設備情報を体系化し、アスリート自身が目的に応じて使いこなせる「リカバリーマップ」を設計・制作 |
| 実施期間 |
2026年1月〜3月 |
本プロジェクトについて
HPSC(ハイパフォーマンススポーツセンター)は、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が運営する、スポーツ医・科学研究とトレーニングの中枢拠点です。
HPSCには、アスリートが自分のコンディションを整えるための施設が複数あり、アスリートが最高のコンディションで競技に臨めるよう、多様な手段と設備が揃っています。
しかし各施設の情報がばらばらで整理されていなかったため、アスリートが「自分の目的に合った手段がどこで使えるか」をすぐに判断できない状況がありました。
近年、アスリートのパフォーマンスの維持・向上のためにリカバリー(時間経過に伴う多面的(生理的・心理的など)な回復過程)への注目が高まる一方で、「何が本当に効果的なのか・どう取り入れればよいのか」はまだ十分に知られていないという背景もあり、科学的根拠をふまえた情報提供のあり方自体が問われていました。
当初の依頼は、以下の資料をベースに「アスリートが科学的根拠にもとづいたリカバリー手段にアクセスできるように施設情報を案内できる資料がほしい」というものでした。しかし打ち合わせを重ねるなかで、課題の本質は情報を並べることではなく、アスリートが自分の状態・目的に応じて能動的にリカバリー手段を選択しアクセスできるようにすることにあると整理されていきました。


そうして今回制作したのが、リカバリーマップです。


本資料は、単なる施設案内からアスリートの「意思決定ガイド」への昇華を目指し、A3見開きで「何のために・どこで・何ができるか」を直感的に判断できるパンフレットとして設計しました。
リカバリーマップは2つのシートで構成されています。目的ベースシートと施設ベースシートです。
目的ベースシートでは、食事・睡眠・温水浴・冷水浴・マッサージ・フォームローリング・有酸素運動・クライオセラピー・サウナ・振動療法など多様な手段を「痛み軽減」「疲労軽減」「パワーの回復」「筋力の回復」「柔軟性改善」「眠つき改善」「身体を休める」という7つの目的軸で整理。各手段の科学的根拠も3段階で明示しています。
施設ベースシートでは、各施設の設備・予約の要否・有料無料をひとめで確認できるよう一覧化。JISS・NTCウエスト・NTCイースト・アスリートヴィレッジの全施設にわたる情報が、1枚で把握できるかたちにまとまっています。
本資料の設計のポイントは以下です。
① 施設案内から意思決定ガイドへの昇華
「どんな施設があるか」「どんな科学的根拠があるか」という情報の提示にとどまらず、「何を実現したいか」という目的起点で手段を探せる構造を設計。資料の性格を、情報の紹介から、アスリートが自分で判断するための地図へと広げました。
② 科学的根拠の3段階評価の追加
各リカバリー手段の科学的根拠の確かさを高・中・低の3段階で明示することを提案。「根拠が低いから使わなくていい」ではなく「根拠のたしかさを知ったうえで自分に合う方法を選ぶ」という姿勢を資料に込めることで、アスリートが主体的に活用できる設計にしました。
③ 目的ベース/施設ベースの2層構造の提案
情報への入り方が人によって異なることを踏まえ、「目的から手段を探す」シートと「施設から設備を確認する」シートの2層構造を提案。リカバリーの目的が明確な人も、まず施設から知りたい人も、どちらの入り口からでも必要な情報にたどり着けるよう設計しました。
④ 使い方4ステップの追加
情報を整理するだけでなく、資料の使い方そのものを4ステップで図解化。初めて手にするアスリートでも迷わず活用できるよう、資料の入り口を丁寧に設計しました。
今回作成した「リカバリーマップ」によって、HPSCの施設の適切な活用と、リカバリーの重要性の認識が促進されることが期待されています。科学的根拠という客観的なデータと、アスリートの主観的な目的意識をつなぐインターフェースを設計できたことは、スポーツ科学の知見をより実践的な価値へと変換する試みとして、大きな手応えを感じています。
【制作協力】グラフィックデザイナー 小澤 愛実
※本プロジェクトは、スポーツ庁委託事業「先端技術を活用したHPSC基盤強化事業」の一環として実施しました。
